「本心」

「本心」©2024 映画「本心」製作委員会

2024.11.16

池松壮亮作品にハズレなし「本心」をイケメン学習帳 究極の推し活手帳の筆者が見た

誰になんと言われようと、好きなものは好き。作品、俳優、監督、スタッフ……。ファン、オタクを自認する執筆陣が、映画にまつわる「わたしの推し」と「ワタシのこと」を、熱量高くつづります。

沖直実

沖直実

「そうか、日本もここまで来ちゃったか~」と最初に思った。ちょっと前なら映画や漫画の中だけで想像をこえなかったテーマが令和の今、想定内の未来、地続きの未来、未来予想図じゃないか?と末恐ろしくなった作品。平野啓一郎の同名小説が原作の本作。2040年自らの意思で死を選んだ母親をAIでよみがえらせた主人公・朔也(池松壮亮くん)は普段は遠く離れた依頼主の指示通りに動く「リアル・アバター」として働く真面目な青年。だが自分に何も告げずに〝 自由死 〟を選んでいた母の本心を知るため、最新AIを搭載したバーチャル・フィギュア(VF)技術を利用して仮想空間に母をよみがえらせる。しかし段々、自分を見失っていく……。



池松くんいわく「『本心』を2020年夏のコロナ禍の隔離期間で一気に読み切って、そのあまりの面白さに圧倒され、この話はこれからの自分たち自身の話、今やる作品」と思ったそうだ。映画化を相談した相手、石井裕也監督は7歳の時にお母様を亡くし、ずっと母親というものに執着があり「本心」をやることに意義を感じたそう。2人がこれは自分たちの物語だと同時に思い作った映画。
俳優歴24年にして「こんなに集中した夏は初めて」と語る意欲作。

私が池松くんを認知したのは「愛の渦」。今もだがベビーフェースの可愛らしい池松くんがこの役をやった事にびっくりした。「紙の月」では宮沢りえさん演じる相手の女性からお金をむしりとる年下の大学生を演じた。何ともいえない色気を持つ池松くんに、うんうん、ハマっちゃうのわかるなぁ……と納得したのを覚えている。池松くんの魅力は独特な存在感と演技力。彼は、例えば静かに見えるようで内面に強い感情を抱えた役柄を演じるのが本当にうまいと思う。リアルで自然体、繊細な感じなんだよね。

また私が強く思うのは池松作品にハズレなしという事。多分、彼の作品選びが幅広く普通は断るような役柄にあえて挑戦し続けているからだと思う。なんか誠実さの塊みたいな印象を受ける。そして記憶に新しい月9の「海のはじまり」で演じた津野役が本当によかった……キラキラしてない月の魅力……一度、池松沼にハマると抜け出せない。

今回、主人公の幼なじみ役の水上恒司くんも大ヒット映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」とはガラリと変わり今どきのドライな若者を演じている。それがとてもリアルで「水上くん、こういう役もできるんだな」と新鮮な発見になった。

そして妻夫木聡くん。本当に大人のすてきな役者さんになったなぁ……。(上から目線)今回はVFの開発を行う冷静な技術者を好演している。私が彼を知ったのは2001年の「ウォーターボーイズ」だ。本当に初々しい若者だった。いい役者さんだと思ったのは03年の「ジョゼと虎と魚たち」で、本当に切ない映画で繊細な大学生の役が妙にリアルで心に残った事を覚えている。その後、沢山の演技賞をとっているが何故かいい意味でベテラン感がない。しかし、最近の最近の大人の雰囲気はなんだ?

他にも仲野太賀くん、綾野剛くん、三吉彩花さん、田中泯さん、そして田中裕子さんと何とも超豪華なキャスト陣だ。

もうすぐ近くにある未来。この作品を見て私も亡くなった父親にバーチャルでいいから会いたいなと強く思ってしまった

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ライター
沖直実

沖直実

1992年にラジオパーソナリティーとしてデビュー。東京FMやラジオ日本などでパーソ ナリティーとしての活動の傍らで、イケメン好きが高じて2004年より毎年「沖直実のいい男祭り」を主宰。ブレークする前の斎藤工や城田優、宮野真守、上地雄輔など数多くのイ ケメンたちをいちはやく発掘する。イケメン評論家としてイケメンイベント企画やイケメン キャスティング、オーディンション審査員、雑誌コラムなどと幅広く活動。
究極の推し活手帳「イケメン学習帳」日興企画から発売中。

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