「正直にお伝えします⁉」より 

「正直にお伝えします⁉」より 

2024.6.11

コ・ギョンピョがうそをつけなくなったアナウンサーを演じるお仕事ドラマ×ラブコメ「正直にお伝えします!?」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子、梅山富美子の4人です。

梅山富美子

梅山富美子

Netflixで配信されている韓国ドラマ「正直にお伝えします!?」(全12話)は、感電の事故からうそがつけなくなったアナウンサーの転機を描いた作品だ。お仕事ドラマではあるものの熱血でもドロドロ感もなく、中盤からはラブコメ色が強くなるので気軽に楽しめる〝韓ドラ〟だ。
 


真面目なアナウンサー、事故がきっかけでうそがつけなくなる

テレビ局に勤める真面目なアナウンサーのソン・ギベクは、事故がきっかけで思ったことを口にするようになってしまう。そんなギベクに興味を持った放送作家のオン・ウジュは、バラエティー番組への出演を打診。生活のために不本意なバラエティーに挑戦するギベクは、その正直さで良くも悪くも注目を浴びていく。
 
もともとギベクは、うそをつく性格ではない。迷惑な上司に逆らうこともなく、〝裕福な家庭出身〟といった自分にまつわるうわさを否定せず、と不条理をやり過ごしたり、うそを見過ごしたりすることがあっただけだ。第1話では、自身の過失はないのに上司に謝る場面は彼の性質をよく表しているし、だからこそ、そんな彼が特異体質になってしまうのが皮肉だ。
 
シニカルな部分があるギベクは、言葉や行動で絶妙な笑いを誘う。恋愛リアリティー番組の撮影で、ほかの出演者の歯にワカメが付いていることに気づかせようとするのだが、うそをつかずに伝えようと何度もメールの文章を考える姿は噴飯もの。ギベクを演じたコ・ギョンピョのとぼけつつも毒を吐く表情がなんとも絶妙で、芸達者ぶりに舌を巻く。
 
また、ギベクはバラエティー進出を勧めてきたウジュに対して恋心が芽生えていくのだが、中盤からはラブコメ展開が中心になる。ギベクが自身と仕事に向き合いはじめ、お仕事ドラマとしての面白さに脂が乗ってきたところで恋愛中心になるのは若干惜しさも感じなくはないが、恋のライバル、キム・ジョンホンがこれまた興味深いキャラクターで物語をけん引する。
 

コ・ギョンピョ、カン・ハンナらキャストの演技が素晴らしい

〝国民の婿〟と称される人気タレントのジョンホンは、ギベクの元同級生で、ウジュの元カレ。人気者の自分が好きで、周囲からなにを言われても気にしていないそぶりだが、休みもなく働き、心の疲労は限界まできている。うそも平気でつくけれど、ウジュに未練たらたらで、彼女のことになるとついつい本音が出てしまう。
 
ジョンホンを演じたのは、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」などで知られるチュ・ジョンヒョク。うそと本音が入り交じるスターの姿はとてもリアルで、すでに心に限界がきているけれど、それを隠して〝表の顔〟をする演技は胸が締め付けられるほど。ジョンホンは心身ともに深刻な状況にあったものの、その問題があっさり描かれてしまったのはもったいなかった。もっと深掘りしてほしいほど引き込まれる人物につくり上げたチュ・ジョンヒョクが、今後さらに活躍の場を増やす気がしてならない。
 
主演のコ・ギョンピョ、ウジュ役のカン・ハンナ、チュ・ジョンヒョク、そして脇を固めるキャストの演技が素晴らしく、彼らが演じたキャラクターがそれぞれ魅力的な本作。それゆえに、気軽に楽しめるラブコメとして良かったものの、物語に〝もっと〟と欲深さを覚えてしまった。
 
Netflixシリーズ「正直にお伝えします⁉」は独占配信中

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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