「嘘八百 なにわ夢の陣」©️「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

「嘘八百 なにわ夢の陣」©️「嘘八百 なにわ夢の陣」製作委員会

2023.1.06

特選掘り出し!:「嘘八百 なにわ夢の陣」 芸達者そろえて初笑い

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

こちらはお正月らしい喜劇。目利きだがさえない古美術商、則夫(中井貴一)と、腕はいいのにパッとしない陶芸家、佐輔(佐々木蔵之介)のコンビが、大阪を舞台に贋作(がんさく)を巡る騒動に巻き込まれるシリーズの3作目。

今回2人が挑むのは、秀吉ゆかりの幻の「鳳凰(ほうおう)」の器。大阪で二つの「秀吉博」が開かれることになり、両方が鳳凰を目玉に据えた。佐輔と則夫は対立する陣営のそれぞれに雇われるが、2人ともクビに。それなら〝本物の〟鳳凰を作ってやると本気を出す。

普段はうだつの上がらない2人が、ここぞという時に実力を発揮。創作の情熱とひたむきさや、古美術にまつわるうんちくが見どころ。描けなくなった「波動アーティスト」のTAIKOH(安田章大)らも登場し、にぎやかに展開する。

中井と佐々木の息の合ったやり取りは安心して見ていられるし、脇役たちも出しゃばり過ぎずに個性を主張。終盤、長尺で動きも少ないクライマックスは、中井の巧みな長広舌で見せきった。往年のプログラムピクチャーを思わせる、肩の凝らない一作。武正晴監督。1時間52分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(勝)