「キャンディマン」

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2021.10.14

時代の目:「キャンディマン」 悲劇の怪物、幻想的ホラー

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

鏡の前で「キャンディマン」と5回つぶやくと、かぎ爪の手を持つ怪物が現れる。そんな都市伝説を映像化した1992年の同名ホラーの続編だ。主人公アンソニー(ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世)は、恋人とともに米シカゴの高級アパートに移り住んだ若き芸術家。地元に伝わるキャンディマンのうわさ話に興味を抱いた彼の周辺で新たな惨劇が起こる。

前作で鮮烈なインパクトを放ったキャンディマンのルーツは、19世紀末の奴隷制度の犠牲者だった。今回、製作と脚本を手がけた「ゲット・アウト」のジョーダン・ピールは、歴史上繰り返されてきた人種差別を主題に取り込み、その悲劇と怒りを象徴する存在としてキャンディマンを再定義した。

ピールに抜てきされた新進女性監督ニア・ダコスタの演出もユニーク。キャンディマンの伝説が影絵など多様な形態のアートによって語り継がれていくという斬新なアイデアに加え、かつてスラム化していたロケ地の都市開発をめぐる批評的な視点も盛り込まれている。殺人シーンまでも幻想的な血みどろのアートのよう。賛否は分かれようが、実に先鋭的な恐怖映画である。1時間31分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

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