「ワンダーランド:あなたに逢いたくて」

「ワンダーランド:あなたに逢いたくて」Netflix映画「ワンダーランド:あなたに逢いたくて」は独占配信中

2024.8.05

亡き大事な人と一緒にいられるなら禁断の科学を使用する? 人類の願いと葛藤を描いた「ワンダーランド:あなたに逢いたくて」

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

大野友嘉子

大野友嘉子

死後も現世とつながっていたい。亡くなった人といつまでも一緒にいたい。そんな人類の古くからの願いを、正面から描いた映画「ワンダーランド:あなたに逢いたくて」がネットフリックスで配信されている。
 
人工知能(AI)を用いて仮想現実にいる死者と対話できるサービス「ワンダーランド」。生前に交わした会話などを機械学習し、在りし日の姿を忠実に再現する。ワンダーランドを利用する人々の切なる思いと葛藤を映し出した作品だ。
 
タン・ウェイ、ペ・スジ、パク・ボゴム、チェ・ウシク、チョン・ユミ、コン・ユ出演。主役級の俳優らによる豪華キャストになっているのは、テーマがあまりにも普遍的かつ王道だからだろうか。
 
「鉄腕アトム」の天馬博士のように、大切な人との別離を乗り越えられず禁断の科学に手を出すという筋書きは、それほど目新しくない。語り尽くされた人間の苦悩を「魅せる」ためには、華やかで確かな腕を持つ俳優陣が必要だ。
 


タン・ウェイ、ぺ・スジら豪華キャストで普遍的な物語をつむぐ

4組のストーリーが同時進行する。現実社会側にいる人と仮想現実側に行った者のどちらがワンダーランドに申し込んだのか。はじめは会えるだけで喜んでいた両者の間に、次第に溝が生まれる様子。
 
一方がワンダーランドに行ってから関係が始まる1組を除くと、どれも切ない物語だ。それでも、群像劇仕立てなのでウエットになりすぎず、程よく淡々としている。俳優たちのパフォーマンスの高さについては、書くまでもない。
 
本作は禁断の科学を否定しない。ワンダーランド及び類似のサービスは既に社会に広く普及しており、誰もが利用できるようになっている。禁断であっても、それによって多くの人が(一時的にせよ)救われることを示す。
 
登場人物たちは最終的に現実を直視するようになる。ワンダーランドを解約した時、残された者はまた歩き始めるためのスタートラインに立つ。科学の力を借りて立ち直るのだ。
 
Netflix映画「ワンダーランド:あなたに逢いたくて」は独占配信中

ライター
大野友嘉子

大野友嘉子

おおの・ゆかこ 毎日新聞くらし科学環境部記者。2009年に入社し、津支局や中部報道センターなどを経て現職。へそ曲がりな性格だと言われるが、「愛の不時着」とBTSにハマる。尊敬する人は太田光とキング牧師。ツイッター(@yukako_ohno)でたまにつぶやいている。
 

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