「蛇の道」 © 2024 CINÉFRANCE STUDIOS – KADOKAWA CORPORATION – TARANTULA

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2024.6.21

特選掘り出し!:「蛇の道」 復讐劇の不条理なスリル

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

黒沢清監督、初のセルフリメーク企画である。元ネタは知る人ぞ知る1998年の同名Vシネマ作品。「リング」の高橋洋が脚本を手がけた復讐(ふくしゅう)ドラマの舞台をフランスに置き換えて再映画化した。

8歳の愛娘を何者かに殺害されたアルベール(ダミアン・ボナール)が、パリ在住の心療内科医、小夜子(柴咲コウ)の協力を得て犯人捜しを開始。怪しげな財団の関係者を次々と拉致していく。

哀川翔、香川照之が主演を務めたオリジナル版は、16㍉フィルムによる低予算映画。主人公を国籍の異なる男女に変更し、鮮明なデジタルカメラで撮影するなど、いくつもの差異が際立つ。その一方で、えたいの知れない謎が渦巻くストーリーの特異な構造は受け継がれており、容疑者と死体の数がどんどん増え、復讐がどこへ向かっているのか分からない不条理なスリルに引き込まれる。

さらに主人公たちが人間を押し込めた寝袋を引きずり、うっそうとした森や草原の斜面を全力疾走するアクションがすごい。黒沢監督にとって「ダゲレオタイプの女」以来のフランスロケ、今回も大成功と言えよう。マチュー・アマルリック、西島秀俊、青木崇高らの助演陣も豪華。1時間53分。東京・角川シネマ有楽町、大阪・MOVIX堺ほかで公開中。(諭)

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