「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」 © WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023

「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」 © WILLOW ROAD FILMS LIMITED, BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2023

2024.6.21

「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」 ナチスから子供たちを救った男の実話

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

第二次世界大戦直前のプラハ。ロンドンで株の仲買人をしている青年、ニコラス・ウィンストン(ジョニー・フリン)はナチスから逃れてきたユダヤ人たちの悲惨な暮らしを目にする。せめて子供たちをイギリスに避難させたいと思った彼は、仲間と里親を探す活動を始める。

オスカー・シンドラーや杉原千畝のように、ホロコーストから命を救うべく奔走した男の実話を映画化。「見たものを見なかったことにはできない」という気持ちに突き動かされた偉業を描いている。しかしアンソニー・ホプキンスが演じる晩年のニコラスの胸中にあるものは、列車に乗せることがかなわず、救えなかった命への後悔だ。言葉少なにプールサイドでたたずむ彼の表情には、ヒーローのような勇ましさは全くない。

ジェームズ・ホーズ監督は過去と現在とを交錯させながら、ひとりの男の希望と絶望を丁寧に描き出している。この実話を全く知らずに見たため、テレビ番組内で起こるウソのような本当の話を目にした瞬間、涙を抑えることができなかった。1時間49分。東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

ここに注目

激動の1930年代の緊迫感、80年代のユーモアを交えた穏やかな日常。カメラワークや空気感でその対比を際立たせた演出がうまい。緩急のある分かりやすい描写で観客を置き去りにせず、作り手の思いが感動的な終盤へと導く。ワイドショーのようなスタジオでの映像も生っぽさがあって柔らかい。(鈴)

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