「ルート29」

「ルート29」©︎2024「ルート29」製作委員会

2024.11.08

特選掘り出し!:「ルート29」 優しさと不条理の交錯

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「こちらあみ子」の森井勇佑監督が、中尾太一の詩集に想を得て脚本を執筆。「あみ子」の大沢一菜を再び起用した風変わりなロードムービーだ。鳥取で清掃員として働くのり子(綾瀬はるか)は、仕事先の病院の入院患者から「娘を連れてきてほしい」と頼まれる。兵庫・姫路で見つけた小学生のハル(大沢)と一緒に、姫路と鳥取を結ぶ国道29号の旅に出る。

「あみ子」で強烈な印象を残した大沢は2年の間にずいぶん大きくなったものの、群れずこびない異端児がよく似合う。1人で森の中で遊び、初対面ののり子に「おまえは今日からトンボな」(丸眼鏡からの連想?)と言い渡すといった奇矯(ききょう)な言動にも違和感がない。一方綾瀬は、口数少なく自分に閉じこもるのり子に、オーラを消して挑戦。奇妙な人たちと出会い、道連れにしながら旅は進む。

人と関わるのが苦手な2人が次第に心を開いていくのは定番の展開でも、のり子とその姉、ハルと母親の関係は予定調和に収まらない。のどかな風景とファンタジー調のエピソードも奇妙に接合。優しさと不条理が入り交じる世界は独創的な新しさがあると同時に、分かりやすい感動を求めると居心地の悪さも感じそう。2時間。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・テアトル梅田ほか。(勝)

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