「からかい上手の高木さん」 ©2024映画『からかい上手の高木さん』製作委員会©山本崇一朗/小学館

「からかい上手の高木さん」 ©2024映画『からかい上手の高木さん』製作委員会©山本崇一朗/小学館

2024.5.31

「からかい上手の高木さん」 みずみずしい〝好き〟の微妙なグラデーション

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ある島の中学校で、隣席の女の子の高木さんに何かとからかわれる男の子の西片。ある日、2人は離ればなれになってしまう。それから10年、母校で体育教師をしている西片の前に、高木さんが教育実習生として現れる。再会した2人(永野芽郁、高橋文哉)の止まっていた時間とからかいの日々が再び動き出す。同名人気コミックの10年後を映画化した。

島のゆったりとした自然と時間の流れ、穏やかな空気感が、人物の表情や会話、街や海辺のすべてにいきわたる。ロケ地の香川・小豆島が陰の主役と言ってもいいほどだ。「好き」を伝えること、片思い、人が分かりあうことを、純度高くほほえましいほどにシンプルかつ素直に映し出す。愛の形は無数にあれど、時には身構えずにのんびりとした気持ちでクスッとしながら味わうのもいいもの。終盤の長回しは見ている側が照れるほど笑ってしまう。不登校の少年と少女、友人らの絡み具合もほどよく、キャスティングの妙もさえた。過ぎ去った青春を懐かしむ世代にもお薦め。今泉力哉監督。1時間59分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(鈴)

ここに注目

思わせぶりな中学生の恋愛ギャグマンガだった原作の、10年後という設定が意外。25歳にもなって西片は幼すぎと思わぬでもないが、さすが今泉監督、終盤に2人が並んで会話する長回し場面に、「好き」の微妙なグラデーションをたっぷり、みずみずしく見せた。原作ファンにも新鮮では。(勝)