ひとしねま

2024.5.31

私と映画館:臨場感 トラウマレベル

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

最近は〝声出しOK〟の「応援上映」など、ライブ感覚で映画を楽しむ企画が定着したが、満員の映画館で自然発生した臨場感には忘れえぬ思い出が多い。特にホラー映画における観客のどよめきや悲鳴は、恐怖を倍増させる。筆者が少年時代に体験したベスト3を紹介したい。

まず3位は、1979年の中2の夏休みに見た「エイリアン」と「ハロウィン」の2作。前者は有楽座、後者はニュー東宝シネマ1の初日に駆けつけたが、いずれも終盤、ヒロインが倒したはずの宇宙生物と殺人鬼が画面奥にヌーッと復活するシーンでド肝を抜かれた。まさに映画館全体が「息をのむ」恐怖感だった。

2位は「サスペリアPART2」。「フューリー」(1978年)との2本立てオールナイトで、会場の大宮ハタプラザは熱気ムンムンの超満員。ドアの向こうから怪奇人形が突然現れる中盤のショックシーンで、当時中1だった筆者の前列に座っていた若い女性の団体客が、「うぎゃーっ!」と一斉に座席から飛び上がっていた。

そして1位は同じく大宮ハタプラザの「ファンタズム」。同じ東宝東和配給のほのぼのアニメ「がんばれ!!タブチくん!!」が併映だったため、そちらが目当ての親子連れでぎっしりの場内は、子供の絶叫や泣き声が飛び交っていた。今こんなトラウマものの2本立てをやったら、苦情が殺到するに違いない。(映画ライター・高橋諭治)

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