「トリとロキタ」 ©LES FILMS DU FLEUVE-ARCHIPEL 35-AVAGE FILM-FRANCE 2 CINÉMA-VOO et Be tv-PROXIMUS-RTBF(Télévision belge)Photos©Christine Plenus

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2023.3.31

特選掘り出し!:「トリとロキタ」 幼い絆、救いなき世界で

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

アフリカからベルギーへ渡る途中で出会い、本当の姉と弟のように暮らしているロキタ(ジョエリー・ムブンドゥ)とトリ(パブロ・シルズ)。ロキタは祖国にいる家族に送金するためにドラッグの運び屋をして金を稼ぎ、トリは時折パニックを起こすロキタを支えていた。ロキタは偽造ビザを手に入れるために、さらに危険な闇の仕事に手を染めていく。

これまでも社会的な弱者に寄り添ってきたカンヌ国際映画祭の常連監督、ダルデンヌ兄弟の最新作が届いた。不安定なロキタと、すばしっこくて聡(さと)いトリ。危なっかしいふたりの背中を追いかけるようなカメラの動きがサスペンスを加速させ、ダルデンヌ兄弟の映画作家としてのうまさも際立つ。

この作品は監督の言葉通り、誰も救いの手を差し伸べてくれない世界をサバイブしようとするふたりの「揺るぎない友情についての物語」であり、最後まで懸命に生きようとした人間の尊厳に光が当てられていることは確かだろう。それでも、エンディングに希望のようなものを見いだすことは簡単ではない。難民が置かれている、あまりにも過酷な現実に言葉を失った。1時間29分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)

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