「私の夫と結婚して」より © Studio Dragon by CJ ENM

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2024.2.23

主人公がリベンジする姿にスカッとするパク・ミニョン主演の痛快ドラマ「私の夫と結婚して」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

クズすぎる夫と親友に主人公がリベンジしていく姿にスカッとすること間違いなしの韓国ドラマ「私の夫と結婚して」が、Amazon Prime Video のトップ10(日本)で1位になるなど話題だ。王道な復讐(ふくしゅう)劇ながら、強烈な登場人物たちが繰り広げるありそうでなかった展開が、多くの視聴者を魅了している。(以下、本編の内容に触れています)
 

夫と親友に殺されたはずが10年前に巻き戻った主人公の復讐劇

本作は、韓国の人気ウェブトゥーン(韓国発祥のWEBマンガ)が原作。末期がんを患う主人公のカン・ジウォン(パク・ミニョン)は、夫パク・ミンファン(イ・イギョン)と親友チョン・スミン(ソン・ハユン)の浮気現場を目撃し、揚げ句の果てに2人に殺される……。しかし、再び目を覚ますと突然10年前の2013年に戻っていた。
 
10年前に戻ったジウォンは、混乱しながらもミンファン、スミンとの関係を一刻でも早く断とうとするが、うまくいかず。さらに、前の人生で起こったことを避けられないこともあると気づく。それでも同じ人生を歩むまいと運命に立ち向かうことを決意。夫に軽視され、親友にすべてを奪われてきたジウォンが、人生を取り戻していく様子が痛快に描かれる。
 
ジウォンのことを「優しくて控えめで両親によく仕える」〝結婚用の女〟と考える激ヤバ男ミンファンのクズっぷりと、ジウォンのしあわせが許せない女スミンの狂気っぷりは韓国ドラマ史に残るほどインパクト大。回を増すごとに、2人がどんな手を使ってジウォンを陥れようとするのか、と期待してしまうほど。悪役(ミンファン、スミン)が強烈でしぶといからこそ、主人公(ジウォン)を応援する手に力が入る。
 

パク・ミニョンはじめ役者陣のキャスティングが大当たり

俳優陣も全員当たり役だった。ジウォン役のパク・ミニョンは、末期がん患者役のために体重を37キロまで落としたと報じられたほど衝撃のやつれた姿を披露。第1話では、ジウォンが病気で精気がなく歩くのもやっとなのに、さらなる不幸が降りかかり、その絶望の表情に胸が締め付けられる。
 
そこから一転し、人生をやり直すことになると表情からすべて生き生きとし始め、陰ながら支えてくれる部長ジヒョク(ナ・イヌ)との恋愛パートでは、数々のラブコメに出演してきたパク・ミニョンの本領が遺憾無く発揮されている。
 
パク・ミニョンと相性がばっちりだったジヒョク役のナ・イヌにも、視聴者から熱視線が注がれている。いちずにジウォンを思い、やさしく見守り、危険なときにはすぐにかけつけるジヒョクの姿は忠犬のよう。また、自身も過去に戻っていること、彼女をしあわせにできるのは自分ではないかも……という考えから彼女への好意を抑えている〝つもり〟だが、あふれ出る気持ちはダダ漏れ、というナ・イヌの演技は魅力が爆発していた。
 
そして、なんといってもすべてを持っていく勢いだったキャラクター、スミンを演じたソン・ハユンが圧巻。可愛らしい服装とメーク、計算し尽くした仕草は小悪魔女子そのもので、ミンファンや​​上司のキム課長(キム・ジュンヒ)がスミンの手中にハマるのも納得。
 
ジウォンのことになると「そこまでやる!?」と突っ込みたくなるほどひょう変して恐ろしい素顔を見せるが、中盤から後半は自業自得ながら不憫(ふびん)に思える場面もあり、単純だけれど複雑なスミンをソン・ハユンが解像度高く演じた。
 

復讐劇だが、笑いの要素がちりばめられ、ラブストーリーとのバランスも絶妙

復讐劇なのに笑いどころが多い作品となっているのは、イ・イギョンが、ミンファンという役を憎めないキャラクターにしたことが大きい。女性を見下し、時に暴力を振るうなど、顰蹙(ひんしゅく)を買う役だが、ジウォンのやり直しの人生では割とやられっぱなしで、小物感が漂っていたのも小気味よい。
 
さまざまな笑いがちりばめられ、コメディーとしても絶品なのが本作の魅力。第6話では、会社の屋上でBTSの楽曲を聞いていたジウォンが、13年には発売していない楽曲「Dynamite(ダイナマイト)」の話をすると、ジヒョクもつられて「Spring Day」と17年の楽曲の話をしてしまう。
 
ジウォンがジヒョクも過去に戻っていることを知るというシリアスなシーンだが、2人のうっかりに思わず噴き出してしまうような演出となっている(しかも両楽曲が流れ、リリース時期も表示されるという丁寧っぷり)。
 
復讐劇とコメディー、そしてラブストーリーのバランスが絶妙で、俳優陣の演技もハマっていた本作。俳優陣はさらなる注目を浴びることになりそうで、実力のあるソン・ハユン、イ・イギョンが韓国国外でもブレークすること必至。ナ・イヌは、兵役が控えているが、除隊後にさまざまなジャンルの作品で活躍するのを期待したい。
 
「私の夫と結婚して」はAmazon Prime Videoで独占配信中。

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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