「化け猫あんずちゃん」 ©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

「化け猫あんずちゃん」 ©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

2024.7.19

特選掘り出し!:「化け猫あんずちゃん」 みずみずしい、ひと夏の物語

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

30年以上生きて化け猫になったあんずちゃん(声・森山未來)は、人語を解しスクーターを乗りこなしてお寺の寺男として働いている。和尚の息子が現れて11歳の娘かりん(五藤希愛)を預けていったために、あんずちゃんは夏休みの間の世話係となった。

人を食ったと、あきれるなかれ。タイトルと設定と絵柄から予想される興趣のはるか上を行く佳品。だらしない中年オヤジのごときあんずちゃんは情に厚い人格者(?)で、頼りない父親を、不満だらけでも慕うかりんを見守る。その距離感が絶妙で、多感な少女のひと夏の物語としてみずみずしい。

あんずちゃんにしか見えない貧乏神とか妖怪とかが現れるとぼけたエピソードは脱力系のコメディーだし、かりんの母親に会うためにあんずちゃんと地獄に行くという展開は冒険ファンタジー。

いましろたかしの漫画を原作に、いまおかしんじが新たな物語として脚本化。新鋭アニメ監督の久野遥子と「カラオケ行こ!」などの山下敦弘が共同監督した。実写の映像を基にアニメにしたロトスコープの手法によるリアルな動きと山下監督のほんわか演出は相性もばっちり。親子で楽しめること請け合い。1時間34分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(勝)

この記事の写真を見る

  • 「化け猫あんずちゃん」 ©いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会
さらに写真を見る(合計1枚)