ひとしねま

2024.6.28

私と映画館:忘れがたい特別な〝体験〟

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

iPhoneのカメラロールの「この日」機能に、子供と一緒に映画館に行った日の写真が出てくると、つい見入ってしまう。

初めて子供を連れて行き、「ファインディング・ドリー」を見たのは吉祥寺プラザ。思い出の劇場は、今年1月に閉館してしまった。新宿のTOHOシネマズに行く際には、歌舞伎町に向かう途中の信号待ちでゴジラの安否を確認するのがお約束だ。

ユナイテッド・シネマとしまえんで見た「ジャングル・ブック」は、リアルな動物たちが怖すぎて泣き出してしまい途中退場。仕方がないので今はなきとしまえんで遊んでから帰ってきた。ポスターの前で写真を撮ることを恒例行事にしていたのに、成長するにつれて「早くして!」と嫌がられるようになった。

そんな思い出も含めて、映画は映画館で見ることによって忘れがたい特別な〝体験〟になる。……と、何を今さら的なことを若干しみじみ思いつつ、最後に親子で映画館に行ったのはいつだっただろうか?

そういえば「ゴジラ-1.0」に行こうよと誘ったら、もう友達と見る約束をしているからと断られたのだった。「最後とは知らぬ最後が過ぎてゆく その連続と思う子育て」という同意しかない俵万智さんの短歌がある。親子での映画鑑賞もこのパターンか⁉と思ったりもするが、しばらくは誘ってみようと思っている。(映画ライター・細谷美香)

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