この1本:「ANORA アノーラ」 〝男性性〟を過激に撃つ
ショーン・ベイカー監督はiPhone(アイフォーン)で撮影した「タンジェリン」(2015年)以来、少数派を物語の中心に据えてきた。弱者ではあっても、差別や暴力にみすみす屈することはない。美化するでも神聖化するでもなく、したたかにたくましく生きる彼ら/彼女らを通して、世の中の〝男性性〟を過激に撃つのである。 ニューヨークのヌードダンサー、アニーことアノーラ(マイキー・マディソン)は、ロシア語が分かるという理由で接客したロシアの富豪の息子イバン(マーク・エイデルシュテイン)と意気投合。イバンが帰国するまでの7日間、恋人として過ごすことになった。2人はショッピングにパーティーに、金に飽かせたぜいた...