©新見伏製鐵保存会 左から上田麗奈、久野美咲、岡田麿里監督

©新見伏製鐵保存会 左から上田麗奈、久野美咲、岡田麿里監督

2023.9.04

「そんな真似しないでください!」中島みゆきの大ファン岡田麿里がぴしゃり! 「アリスとテレスのまぼろし工場」 プレミア上映会

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

ひとしねま

ひとシネマ編集部

岡田麿里による完全オリジナルストーリーで、岡田の才能に惚れ込んMAPPAの代表・大塚学が「岡田監督の作りたい世界を徹底的に追求した作品を作りたい」と制作を決意した、MAPPA初のオリジナル劇場アニメーション作品となる「アリスとテレスのまぼろし工場」(毎日新聞社など製作委員会)。

話題作だけあって、満席の観客席はプレミア上映への期待感と興奮に空気が張りつめていたが、ラジオDJ役として登場しているMCの吉田アナウンサーが「皆さんがあまりにも緊張感を持っているとご登壇者がめちゃめちゃ緊張してしまうので、『親戚の人が登壇するな』、くらいの気持ちで迎えてあげて」と会場の笑いを誘い、場を和ませました。

なんとこの日上映された【劇場公開バージョン】が完成したのは、実は前日9月3日(日)夜!!できたてほやほやの本編であることが告げられると、会場からは感嘆の声が漏れました。

そんな中、ある日突然起こった製鉄所の爆発事故により出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす14歳の主人公・菊入正宗の同級生でミステリアスな雰囲気の佐上睦実を演じた上田麗奈、町の製鉄所に閉じ込められている野生の狼のような少女・五実を演じた久野美咲、脚本・監督を務めた岡田麿里が登場、割れんばかりの盛大な拍手で迎えられました。

すでに行われている試写会(※先行上映バージョンの映像で実施)では、「震えが止まらない」「感情が爆発する」といった絶賛の声が多く上がっていることに岡田は、「ありがとうございます」と少し照れた表情を見せ、本作の魅力の一つである〝変化を禁じられた町〟という設定をどのように思いついたのかという問いに対しては「世代もあるのかもしれないけれども、変わっていくことがいいこと、変わらないことはダメな事、と言われて育ってきた。でも変わるってことに対して焦る部分やマイナスに思ってしまう気持ちもあったんです。時代的になんとなく閉塞感を感じる中で、変化をできないことってこうゆうことなのかなと思うようになった。変化って勝手にしちゃんうんだな、と思ったりしたので、そういったことを書いてみました」と〝変化〟に対する岡田の疑問が着想のきっかけであることを明らかにしました。

「もし、〝変化を禁じられた町〟で生きるとしたら?」と聞かれた上田は久野に「どっちだろうね? ポジティブに受け取るのか、ネガティブに受け取るのか」と問いかけつつ、「私はポジティブに受け取ると思う。それはうちに猫ちゃんがいるから。ずーっと変わらずに、ずーっと一緒にいられるなら幸せだなって」と答えると久野も、「確かに~すごく幸せだね」となんとも微笑ましいやり取りをみせ、思わず会場はほっこりした空気に包まれました。

上田麗奈

久野は「初めて脚本を読んだ時にこの世界観が息苦しく感じてしまって。でもネガティブって訳じゃなくて、私たちの日常でも望んでいる状況じゃないけど、でも安定して毎日暮らせているなぁって、誰しも感じているんじゃないかな」と日常生活と重なる部分があると回答。変化のきっかけとなった、少年少女たちの「恋する衝動」について、MCから「恋愛の作品が作りたかった? 」と聞かれた岡田は「・・・・・・作りたかったですね!恋愛って恋より愛が偉い、みたいな感じがあるけれど、比べられるものじゃない。恋って本当に落っこちるっていうか、恋って誰もができるものじゃないんじゃないかな。否応なく好きになっちゃう、そのよく分からないパワー、恋のトリガーというかその衝撃度って本当に〝恋する衝動が世界を壊す〟んじゃないかな。これまで愛情に繋がる恋愛を書いてきた。恋とはご無沙汰になった日々の中で、その激しさを書いてみました」とコメント、キャストをはじめ、観客たちが岡田ならではの世界観に惹きこまれていきました。

MCから「衝動が抑えられないくらい何かにのめり込んだり感情が抑えられないような経験はあるか? 」を聞かれた上田は「カフェイン取りたーい、とか(笑)」と即答。「物理的に世界を壊すってことではないけど、自分の世界が昨日と違ってしまう。カフェイン一つにしても、無いと落ち着かないとか、生きてられない、ってなると恐ろしい。自分の世界が壊れるってそうゆう小さいことでも思ったりしたりする」と答えると、久野も「一つの言葉、行動で世界が変わるって日常でもあるもんね~」と深く共感。〝恋する衝動〟をどう感じるかと聞かれた上田は、ネタバレしないように悩みながらも、「恋っていいな、ってやっぱり思いました。もどかしいなぁ、とか、苦しいなぁとかも観ていて感じたんですけど、それがあるから・・・・・・んあぁぁぁ・・・・・!世界が変わるって言い方で難を逃れますかね?」と苦笑いしつつも、「観終わった後はホッとするような。なぜホッとするのかは観ていただいて、『これかな?』って思ってもらうのがいいと思う」と回答。

久野美咲

岡田は「上田さんはアフレコの時に本当に入り込んでくださって、終わった後の表情が印象的でした、安心したような感じに見えました」と語ると、「それは睦実視点でこの映画を観ると・・・・・・そうなるかも・・・・・・」と上田は収録時を回顧した。最後まで演じてどんな気持ちになったかと聞かれた久野は「自分の人生と重ね合わせた瞬間があって、演じた私だけでなく、もしかしたらこれからご覧になる皆さんもその瞬間を味わえるのがこの作品なんじゃないかと思いますね」と本作の魅力を熱く語りました。

5月に行われたMAPPA STAGE 2023にて、榎木淳弥、上田、久野の3人がトライアングルになってお互いの目を見ながらアフレコをしたことが話題になったが、上田は「3人の肉体というか、リアルを感じながら演じたいシーンだったので、画面や台本越しキキャストが見えるようにアフレコしたいと提案して。休憩中に3人で話し合って、3人で提案した」と誰か一人のアイディアではなく、3人の提案だったことが明かされました。


そんな熱量溢れる収録を目の当たりにしていた岡田は「お互いに見ながらってこうゆう作用をもたらすのか。他の声優さんたちもみんな見ていて、終わった後『うわぁ・・・・・・』って感動していました。本当にあのシーンをいただいたから、スタッフもみんなすごいやる気で、作画監督の石井さんも一生懸命描いた」と3人の演技を称賛した。

ここで、本作のために主題歌を書きおろした中島みゆきからの音声メッセージが到着!会場から驚きの声が上がる中、中島の熱いメッセージが流れると、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起った。中島の大ファンである岡田は「中島は、とにかくもう岡田麿里さまを尊敬申し上げております」というメッセージに顔を覆い、「毛穴が開きまくって...本当にありがとうございます!本当に凄いいい曲なんですよ!!」と終始恐縮しっぱなし。しゃべり声と歌声が違うことを表現するため、MCが主題歌のサビを一節歌うと岡田は「そんな真似しないでください!」とすかさずツッコみファンぶりを発揮し、会場の笑いをさらいました。

最後に上田は「(本作には)決して爽やかではない少年少女たちの青春というイメージがあるんですけど、曇り空が似合うなぁとか、さびた匂いが感じられるなぁとか、そんなふうにこの映画にどっぶり浸かると色んな感情が心の中に渦巻いて、感情が爆発しそうになる、そんな気がしました。睦実というキャラクターは不思議にあふれている子なんですが、睦実視点で観るとちょっと違った風に観える、そんな面白さもある作品なので、ぜひ、一回目、二回目、三回目と膨らませながら観てほしいなと思います。私たちもまだ観れていない本編、ぜひ楽しんでいってください!」、久野は「この日を迎えられたのは本当にたくさんのスタッフさん、そしてキャストのみんなの熱量と愛と勇気と色んな感情が合わさってできている作品で、画面の隅から隅までそれが伝わってくる。五実に関して詳しくは言えないんですが、最後まで演じて完成した作品を観て、誰かをまっすぐに好きになる気持ちって素敵なことだし、好きっていう気持ちって色んな事を飛び越えちゃうんだなぁって感じられて。皆さんの心にがっしりと届くものがあったらいいなと願っています」、岡田は「制作過程は簡単なものではありませんでした。本当に完成するのかな、スタッフ一人一人が不安だったと思う。でもみんなの熱が途切れなかった。一人一人が走り切れた。声優さんたちの声をいただいて、みゆきさんの曲もいただいて、スタッフがみなさんの想いをいただいて、力に変えて最後まで走り切った映像をこれから観ていただきます。少しでも引っかかるものがあったらいいなと思います。何卒、『アリスとテレスのまぼろし工場』を宜しくお願いいたします」と深々とお辞儀しアピール、会場が熱気に包まれる中、イベントは幕を閉じました。

『アリスとテレスのまぼろし工場』は9月15日(金)より全国公開されます。

関連記事

ライター
ひとしねま

ひとシネマ編集部

ひとシネマ編集部