「ヒエラルキー」より

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2024.6.13

韓国期待の若手俳優勢ぞろい! エリート高校の闇を描いた「ヒエラルキー」:オンラインの森

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梅山富美子

梅山富美子

韓国の若手俳優の層は厚い。エリート高校に通う生徒たちのいびつな学校生活を描くNetflixオリジナルの韓国ドラマ「ヒエラルキー」(全7話)では、ノ・ジョンウィ、イ・チェミン、キム・ジェウォンなど今後の活躍が期待される若手俳優が存在を際立たせていた(以下、本編の内容に触れています)。
 


超大金持ちの生徒が通う、エリート高校が舞台

本作は、超大金持ちの生徒が、ほかの生徒や教師、そして校長までをも支配するチュシン高校が舞台。校内では、大企業の子息キム・リアン(キム・ジェウォン)に逆らってはいけないという暗黙のルールがあるなか、優秀な成績でジュシン高校の奨学生となったカン・ハ(イ・チェミン)が、彼らの世界を乱していく。
 
学校のヒエラルキーを気にせず大胆な行動ばかりのカン・ハは、リアンの彼女のチョン・ジェイ(ノ・ジョンウィ)とバイト先で偶然出会い、はかなく美しいジェイに魅了されていく。そして、リアンとジェイが別れてからは、カン・ハはジェイに急接近。しかし、謎の死を遂げた奨学生イナンの〝二の舞いになる〟と警告を受ける。
 
実は、カン・ハは死んだイナンの弟であり、彼の死の真相を突き止めるためチュシン高校に編入したことが第1話の終盤で明らかになる。これまでさわやかな笑みを浮かべていたカン・ハが〝復讐(ふくしゅう)モード〟に切り替わる場面は、いじめっ子たちへのスカッとする復讐劇が始まるかと大いに沸くが、カン・ハは当初の目的を忘れるほどジェイに本気でひかれてしまう。
 

ノ・ジョンウィ、キム・ジェウォン、イ・チェミンら若手俳優の存在感が際立つ

壮大な始まりを予感させる演出はなんだったのかと肩透かしをくらう展開ではありつつも、お金持ちの学生たちの学生生活が規格外で、その様子を見ているだけで大いに心が躍る。第1話では、「日曜にサーキット場で会おう」なんて高校生とは思えないセリフが飛び出すし、高校2年生のカップルがサーキット場を貸し切って賭けレースをするなんてドラマが過ぎる。夜な夜なジェイたちが通う秘密のバーの隠し扉も、子どものころに夢見たようなワクワク感がよみがえる。
 
また、リアンとカン・ハが夢中になる、複雑な思いを抱えるジェイという役に説得力を持たせたのが、「プロポーズ大作戦」「馬医」「ピノキオ」などで主人公やヒロインの幼少期を演じてきたノ・ジョンウィ。「その年、私たちは」(21〜22年)では金髪のアイドル役で、子役からのイメージを一新した。
 
1人で学校の闇に切り込んでいくカン・ハ役のイ・チェミンは、23年のドラマ「イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜」で注目を浴びるようになり、同23年の「生まれ変わってもよろしく」のミステリアスな役で新境地を切り開いた。また、音楽番組「ミュージックバンク」で司会を約1年7カ月務めるなど、マルチに活躍している。
 
ほかにも、「キング・ザ・ランド」の客室乗務員イ・ロウン役のキム・ジェウォン、「アンナラスマナラ -魔法の旋律-」でいじめっ子の一人を演じたチ・ヘウォン、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の第10話に登場したイ・ウォンジョン、「キミと僕の警察学校」のソ・ボムジュンと20代前半から半ばのこれからますます期待がかかる俳優が集結した。
 
本作は、いじめがテーマに描かれていたが、その描きかたには違和感があった。カン・ハ視点で兄を殺した人物やいじめっ子たちにリベンジしていくのかと思いきや、お金持ちサイドの視点ばかり。誰もがさまざまな事情を持って生きていることを描こうとしており、いじめを助長する内容ではないものの、扱いかたは表層的ととらえられても仕方ないと感じてしまった。
 
いじめの首謀者(無自覚な部分がありつつ)で暴力的なところがあるリアンを、ジェイが好きな理由に物足りなさもあった。ジェイとリアンが仲睦まじく付き合っていたころの思い出の動画が本編に登場するのだが、2人の表情がしあわせいっぱいだからこそ、学校のトップに君臨していたリアンとのギャップが埋めきれず。
 
全7話という長さはコンパクトで見やすかったものの、過去編などもう1〜2エピソード加えて各キャラクターを掘り下げる物語があれば、違和感を払拭(ふっしょく)できたのかもしれないのが惜しいところだ。
 
Netflixシリーズ「ヒエラルキー」は独占配信中

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ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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